• 2020年11月8日

認知症の薬は効くのか?

「あなたは認知症です。」と言われた方は少なくありません。
なぜなら約6人に1人が認知症という時代だからです。
ご家族、身内の方が認知症と診断されたら、何かできることはないのでしょうか。
まず認知症という病気に効く薬はないのか、と考えるのが自然です。
認知症の薬は医師のなかでも評価は大きく分かれます。
その理由を紐解いていくと認知症の薬について理解が深まっていきます。
今回のテーマは「認知症の薬」についてです。

認知症の薬は効果あるの??
医師によっても意見はさまざまなんです。

認知症の薬は極めて特殊です。


認知症の薬は極めて特殊です。
医師によっても評価はまちまちです。
薬効を強調する医師もいれば、
ビタミン剤やサプリメントくらいの感覚で効果がないと言う医師もいます。

これには要因がいくつかあります。

・薬を飲んだからと言って良くなるというタイプのものではない
→すぐに効果を実感できるものではない。

・患者本人が病気と思っていない(病識がない)
→なかなか内服してくれない。


例えば、痛み止めや咳止め、下剤などの薬は、飲めばすぐに効果が実感できます。
あるいは、血圧を下げる薬やコレステロール値を下げる薬などは、血圧の数値やコレステロール値が低下します。客観的に評価ができます。

しかし、認知症の薬は飲んですぐに効果があるわけもないこと。
さらに残念ながら、認知症の薬を飲んでいても認知症は進行してしまいます。

そしてさらに特殊にしている要因が患者さん自身の病識がないことです。
当事者である患者さんが
「自分はどこも悪くない。なのにどうして薬を飲まないといけないのか。」
「私はボケてなんかいない。薬なんてごめんだ。」
といった具合に薬を飲んでくれないことがあります。

実際、国立長寿医療研究センターの調べでは
「認知症の薬を1年以上内服継続できた患者さんは30%以下であった」
という報告もあります。

認知症の薬は4種類あります。
その効果は実感できるのでしょうか?

認知症に認知症の薬は効くのか?


現在(2020年11月現在)、認知症の薬は4種類あります。

認知症の薬は認知症を良くするのか?

という質問の答えは、残念ながらNOと言えるかもしれません。

先述したように、「認知症の薬を飲んでも認知症は進行してしまうから」です。

それならなんでそんな薬があるのか?
という話になります。

認知症の薬は、「認知症の進行を遅らせることができる」
つまり、飲んでいても認知症の進行を止めることはできませんが、何も服用しないで過ごすよりも認知症の進行を遅らせるという効果が期待されるのです。

認知症の薬は「進行を遅らせる」ことができる
たろうクリニックから引用


認知症の薬が効くこともある(少数?)


認知症は進行していく病気です。
認知症の薬は、その進行を止めることができるわけではありません。
あくまで進行を遅らせることができるという薬とご理解ください。

ただし、実際に患者さんをみていると効果を実感したというケースを経験します。
認知症の薬を飲んでいる患者さんの家族から効果があったという報告を聞くこともあります。

例えば

・家事に対する意欲が出てきた 

・挨拶ができるようになった 反応がよくなった気がする

などの意欲が出てきた、反応が良くなったということを経験します。

実際に訪問診療していてこういった声を聞くのも事実です。
ただ正直に申し上げると、効果が実感できるケースというのは決して多くはありません。

医師が薬を処方するときには必ず
メリットとデメリットをよく考えて処方しています。

認知症は多様性があり、ひとりひとりで違う
薬のデメリットもしっかり理解したうえで
困ったことはかかりつけ医に相談を。


認知症の薬にも副作用があります。

認知症を患うような高齢の方は、副作用が出やすい特徴があります。
副作用のデメリットをよく理解する必要があります

特に内服を開始した直後は副作用の出現に注意が必要です。
よく観察して、変化がないかチェックしてください。

そして困ったことがあれば、まずかかりつけ医に相談しましょう。

暴力や攻撃性が高い
そんなときには精神安定剤のような薬が有効なこともあります。

認知症の周辺症状(暴力など)には
精神安定剤が必要なこともある。


認知症の方には
興奮しやすい、攻撃的になった、暴力を振るう、妄想がひどい、夜寝てくれない
といった症状がみられることがあります。

これらは認知症の周辺症状(BPSD)と呼ばれます。

安全に生活できない場合も多くあります。
このような場合も、まずはかかりつけ医に相談しましょう。

場合によっては(認知症の薬ではなく)精神安定剤のような薬が有効・必要になることもあります

認知症が進行しても、ケアが上手な家庭では治療がうまくいっています。
まずは肯定的に、受け入れていくことが大切と感じています。

まとめ 薬よりも大切なこと。

まずは原則として
「認知症の薬=進行を遅らせる」
ということをご理解ください。

認知症の薬に過度に期待しないことが大切です。
薬には副作用やデメリットがあることも忘れないでください。

そして、暴力や興奮で手が付けられない状態の場合に
ときとして精神安定剤が必要になることもあります。


なにより「より良い環境を整える、接し方・ケアの方法」の方が重要です。

どうしても薬に期待してしまいます。
認知症の方は、心が崩壊したわけではありません。
記憶することが苦手になり、過去の記憶も忘れていく病気です。
でも、人格が変わるわけではありません。

認知症になってもその人らしさは保たれます。
まずは大切な人を肯定的に肯定的に受け入れていくこと。
ここから認知症のケアが始まるんだと思います。



医療法人社団 くじら在宅クリニック 03-6915-2011 ホームページ