- 2020年8月1日
「脳梗塞の治療」について知る②
脳梗塞の治療についてのシリーズ2回目です。
前回のおさらいですが脳梗塞は脳の血管が詰まってしまう病気でした。
脳梗塞の急性期(発症してすぐ)の治療では、詰まってしまった血栓を取り除くことが重要という話でした。
それでは、詰まってしまった血栓を取り除く治療を行った後、次の段階で重要なことはなんでしょうか?
今回のテーマは、脳梗塞の急性期から慢性期にかけての治療についてです。
キーワードは脳梗塞の「再発予防」と「機能回復」です。
脳梗塞の急性期治療の復習
脳梗塞は血管が詰まる病気です。
道路(血管)に土砂(血栓)が詰まってしまい通行不能となる病気。
それにより土砂で通行止めになった先に住んでいる住民(脳の一部)が困ってしまう。
住民が必要な物資(血液)を届けてあげることが重要でした。
これが脳梗塞の治療のダイジェストです。
さらに住民(脳)は、必要な物資が届かないとすぐに障害を受けてしまいます。
スピーディに物資を届けてあげることが大切です。
脳梗塞の治療は、急性期(脳梗塞が生じてすぐ)は土砂を取り除く治療を行います。
具体的には、脳血管内治療や血栓溶解療法です。
あくまで治療の目的は、通行止めの先の住民(脳)を救うことです。
脳梗塞の後遺症 なぜ後遺症が残るの?
急性期(脳梗塞が起こってすぐ)の治療は多くは入院で行います。
ある程度の時間が経過すると、脳梗塞の後遺症が残ります。
脳梗塞の後遺症がなぜ生じるのでしょうか?
これもたとえ話で解説します。
土砂崩れで道路が土砂で通行止めとなった。(脳梗塞発症)
通行止めになった先に住んでいる住民に必要な物資が届かない。
住民は物資が届かないとわずか数時間で死んでしまう。(脳が壊死してしまう)
土砂を処理するのに時間がかかったとき、住民は道路が開通するまでの期間、必要な物資が受け取れない。
通行止め先に住んでいる住民が死んでしまって(脳の一部が壊死してしまって)
そこに住んでいた住民の役割ができなくなる=脳の障害(麻痺や呂律障害など)が残る。
これが脳梗塞の後遺症が生じる理由です。
残念ながら脳の一部が壊死する(死んでしまう)と、その部位の機能障害が残ります。
ある程度の時間が経過した脳梗塞の治療
脳梗塞の急性期の治療がある程度終わると、次に(同時進行的に)行う治療があります。
それは
・「再発予防」
・「機能回復」
です。
土砂崩れが生じた道路が再び土砂崩れが生じないように対策をとることが「再発予防」。
通行止めの犠牲になった住民(脳の一部)を元気にさせることが「機能回復」です。
これらについて詳しく解説していきます。
脳梗塞の再発を防ぐこと
まず、「再発予防」というのは脳梗塞が再発するのを予防するための治療ということです。
脳梗塞が生じる原因はさまざまです。
糖尿病、高血圧などの動脈硬化、不整脈などの心臓由来のものなど。
それらがまた新しい脳梗塞を生じないように対策をとる、これが「再発予防」治療です。
道路の通行止めの原因となった土砂崩れが生じないようにする。
土砂崩れが起こったということは、すなわち再び土砂崩れが生じやすい状態でもあるのです。
次の災害(土砂崩れ)が生じないように予防することが重要です。
これにあたるのも血液サラサラの薬に類する治療です。
機能を回復させること
そしてもう一つは「機能回復」です。
これは生き残った脳の部位を活性化させて機能を回復させていこうという治療です。
例えるならば、災害後の復興です。
被害にあった脳の一部(住民)がまた元気になるように支援し励まし、機能を回復させていこうという活動が機能回復の治療にあたります。
具体的には、言語訓練、作業訓練、リハビリ訓練などです。
脳梗塞を発症してしばらく時間が経過してからの治療はこの機能回復がメインになってきます。
ちょうど災害から復興していくことに例えられるように、ゆっくりと時間がかかります。
時間をかけて着実にやることをやっていく。
これによって生き残った(救われた住民)が元気になって機能が少しずつ回復していくのです。
また、機能回復は完全に元に戻ることは難しいです。
そのため、残された機能でどのように生活していくか、これを考えていくことも治療のひとつです。
脳梗塞の治療 まとめ②
脳梗塞の治療は、大きく急性期(発症してすぐ)と慢性期(後遺症が残ってから)にわけられます。
急性期に大切なことは、一刻も早く血栓を溶かす治療を行うことです。
早く道路を通行止めにしてしまった土砂を取り除いてあげること。
それによって、通行止めの先の住民に必要な物資を届けてあげることが治療でした。
慢性期の治療で大切なことは、再び土砂崩れが生じないように対策をとること。
さらに生き残った住民を励まして回復、復興させてあげること。
脳梗塞の後遺症と上手に付き合って生活していくことを一緒に考えていくことが重要です。