- 2019年11月30日
むくみ(浮腫) 注意することは?
在宅医療でよく遭遇する症状のひとつに「むくみ(浮腫)」があります。
むくみのことを浮腫と書いて「ふしゅ」と読みます。
浮腫は健康な人にもよくみられます。
ときに浮腫には緊急で対応しなくてはならない病気が隠れていることがあります。
今回のテーマは浮腫の原因と、気をつけるべき浮腫について学びます。
浮腫は「水がたまること」で起こる
浮腫は間質(細胞と細胞の隙間のこと)に水がたまることで生じます。
日常的に多く経験するのは、飛行機やデスクワークなどで長時間座っていた後でしょうか。
これは主に重力で水が下(足の方)にたまってしまうことによります。
アルコールなどを飲むと血管透過性といって、血液から細胞間質に水が漏れやすくなります。
飲酒後にむくむのはこういったことが原因です。
在宅で多い浮腫の原因は?
在宅でよくみる浮腫の原因の多くは廃用性浮腫と薬剤性浮腫です。
廃用性浮腫とは、動かさないことによって水がたまってむくむことを言います。
例えば、脳梗塞後で麻痺のある患者さんでは、麻痺側に浮腫がみられます。
あるいは、寝たきりの患者さんでは体幹(特に背中側)でみられます。
薬剤性浮腫に関しては、常にその可能性を疑っていないと見逃してしまいます。
浮腫をきたしやすい薬剤については後述します。
浮腫は隠れた病気のサイン?
上述したように動かさないことで循環が悪くなって水がたまった結果、浮腫になることは多いです。
飛行機や新幹線で足がむくむのも広く廃用性浮腫に分類できます。
これらは病気で浮腫んだのではなく重力で水がたまったことが主な原因で動かせば循環が良くなって自然と改善されていきます。
ただし、浮腫が何かしらの病気のサインということもありますので注意が必要です。
気をつけるべき浮腫の代表は心不全
浮腫は健康な人でもみられます。
病気が原因で起こる「気をつけるべき浮腫」には以下のようなものがあります。
- 心不全増悪
- 腎不全増悪
- 肝不全増悪
- 薬剤性
- 深部静脈血栓症
- 蜂窩織炎
- リンパ浮腫
- 甲状腺機能低下症
- 静脈瘤や外傷、アレルギー
などが挙げられます。
浮腫+〇〇症状に注目して観察しよう
上記で挙げたように、さまざまな病気で浮腫は起こります。
ひとつが原因とは限らず複数の病気で起こることもあります。
浮腫だけでこれらの病気を突き詰めるのは困難です。
浮腫以外にどんな症状があるか?
に注目して観察してください。
例えば、浮腫+咳、息切れ、体重増加
などの症状があれば心不全の可能性がぐっと上がってきます。
他にも例えば
浮腫+乏尿、蛋白尿 → 腎不全
浮腫+熱感、痛み、発赤 → 蜂窩織炎(皮膚の感染症)
浮腫+疲れやすさ、便秘、認知機能低下 → 甲状腺機能低下
上記は一例ですが、診断には浮腫+〇〇の症状がないか
に注目することが重要です。
薬剤性浮腫 薬が浮腫をもたらす
薬剤性浮腫をきたす代表的な薬物
- NSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)
- 降圧薬
- ステロイド
- 漢方薬(特に甘草を含むもの)
- 制吐薬
- 抗精神病薬
などが挙げられます。
特に薬を追加処方されたとき、変更したときには注意して観察していく必要があります。
むくみ(浮腫)のまとめ
浮腫は日常的によくみますし、経験すると思います。
浮腫は水が溜まった結果です。
なので水が溜まらないように運動して動かすこと、 弾性ストッキング着用する、フットマッサージなどで循環を良くしてあげることで改善します。
また、浮腫の多くは生理的(病気ではない)なものがほとんどです。
病気のサインで出現することもありますので、浮腫以外にどこかいつもと違うおかしいなところはないかな?と観察することが大切です。