• 2019年9月14日
  • 2019年11月9日

認知症の要注意サイン

少子高齢化社会になって、高齢者の人口が増えるにつれて認知症患者数も増加しています。
2025年には認知症患者は700万人におよぶとも推測されています。
認知症の方の介護や生活をしていく上でどのように関わっていくべきなのでしょうか。
今回は医療の側面から、認知症の要注意サインについてお話していきます。

認知症 観察すべき3つのポイント

  1. 「元気がない」薬の影響か?それとも、うつ病のサイン?
  2. 「急に覚醒レベルが下がった」せん妄のサイン?
  3. 「しゃべりにくい四肢が動かない」脳梗塞のサイン?

1.元気がない 薬剤の影響か?それとも、うつ病のサイン?

「なんとなく元気がない」というのはとても重要なサインです。
元気がない、、の背景にあるかもしれない救急疾患には脳血管障害、心疾患、感染症、消化管出血、血糖異常などがあげられます。
バイタルサインや身体所見で異常があった場合はすぐに救急搬送したほうがいい場合があります。
身体症状に異常がない場合は、まず薬剤(抗不安薬、睡眠薬、抗精神病薬など)による影響を考えます。
特に高齢者で食事がとれていない場合、体重が減っていても薬剤が同量のまま処方されていたりすると、小さい体に対して薬が多くて効きすぎてしまうことがよくあります
また、認知症とうつ病が合併することはよく知られています。
実際に鑑別するのは難しいことが多いです。
ポイントは抑うつ気分、不眠、倦怠感です。
よくよく問診して、少量の抗うつ薬(SSRIやSNRI)をはじめると回復することを確認するのも有効です。

2.急に覚醒レベルが下がった せん妄のサイン?

せん妄の原因

  • 環境の変化、慣れない刺激
  • 便秘、アルコール、薬剤
  • 痛み、感染、脱水、不安 など

認知症の方が、急に騒がしく暴れてしまったりした場合は、せん妄を疑います。
せん妄を見極めるポイントは、「急に起きる」ことです。
認知症がゆっくり進行していくのに対して、せん妄は急激に発症して、一日のなかでも変動があります。
原因があるはずなので、上記で当てはまるものがないか聞いてみることが重要です。
特に「慣れない刺激」をキーワードに覚えておくとわかりやすいです。
施設に入居した、転倒して痛みがある、便秘などがせん妄の原因で多い印象があります。
原因を取り除く環境を整えること、治療介入できるものは薬剤の追加調整で対応していきます。

3.しゃべりにくい、四肢が動かしにくい 脳梗塞のサイン?

認知症の方はご自身でここが辛いと言った訴えができないことがあります。
脳梗塞や脳出血などが見逃されしまうケースもあります。
バイタルサインや身体所見の十分な診察が必要で、診断には頭部画像検査(CT検査やMRI検査)が必要になります。
知りたいことは、なにが脳梗塞のサインなのか?ということです。
シンシナティ・プレホスピタル・脳卒中スケール(CPSS)という便利なツールがあります。

①歯を見せてもらうか、笑顔をつくってもらう

②目を閉じてもらい、両腕を10秒間まっすぐ伸ばしてもらう

③簡単な文章を言ってもらう(「パピプペポ」と言ってもらう)

①②③のうち一つでも異常がある場合は脳卒中の可能性があるといったものです。
これらが正常でも、頭痛がする、嘔吐している場合はもちろん要注意です。

いかがでしょうか。
認知症の方は増加していて身近な人が要注意なサインかな?と思ったら医師に相談してみてください。
まずは「普段となにか違う」が一番重要なサインだったりします。
それに気づくことができるのは、普段からそばにいてくださる方です。

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